医学豆知識

2021年9月号

コロナ禍における高血圧

新型コロナウイルス感染症の拡大で私たちの生活は大きく変化しました。以前から生活習慣病では、運動不足や高カロリーな食事などが問題となっていましたが、コロナ禍でなお一層の問題となってきています。
自粛期間中にはフードデリバリーとテイクアウトの利用が増加し、メニューではラーメン、カレーライス、パスタと、塩分のみならず糖質、脂質も摂取過剰傾向にあります。また、自宅で過ごす時間が多いことによる運動不足も顕著で、これに伴い約25%の人に平均3.7㎏の体重増加がみられたというデータもあります。また、在宅勤務により家庭内での喫煙や飲酒も増えていると考えられます。
 「食塩過剰摂取」「肥満」「過度の飲酒」は生活習慣病の一つである高血圧の危険因子です。目標は家庭内測定で最高血圧125mmHg /最低血圧75mmHg未満とされています。コロナ禍はまだ続くと予測される中、すでに治療を受けている人、今まで指摘されなかった人も注意
しましょう。

2021年8月号

温泉療法

 温泉に浸かると、なぜか体の調子がよくなって元気になる。このような温泉の効果は、経験としては知られていましたが、近年、それを裏付ける科学的な研究が出てくるなど、海外でも温泉が注目されています。
 温泉の主な医学的な作用は、温泉の温熱による血管拡張や血液循環の改善などの「物理的な作用」、温泉に溶け出ているイオンや化合物などによる「化学的な作用」、そして「総合的生体調整作用」の3つです。「総合的生体調整作用」とは、温泉の温度や刺激、温泉地の自然環境などが体内のホルモンや自律神経に働きかけ、乱れた生体機能を本来のリズムに整える作用といわれています。
 「総合的生体調整作用」はどこの温泉でも得られることが分かっています。内分泌や免疫の機能はストレスの影響を受けやすいため、疲れたと感じたら温泉に行ってリラックスしましょう。持病な
どがある人は、医師に相談した上で上手に温泉を利用しましょう。

2021年7月号

サルコペニア

サルコペニアとは加齢や疾患により筋肉量が減少し、筋力や運動機能の低下が進行する状態です。一方、皆さんも一度は耳にしたことがあるロコモティブシンドローム(ロコモ)は運動器の障がいによる移動機能が低下した状態のことです。サルコペニアは特に高齢者の身体的機能が低下する場合に多くみられるのが特徴です。注視されるのは、歩行速度と握力および全身の筋肉量です。歩行速度が0.8m/秒(時速約2.8㎞)以下、握力が男性で26㎏以下、女性で18㎏以下であれば注意が必要です。状態が進行すると筋肉量の減少が運動量の低下につながり、食欲の低下など悪循環を引き起こしてしまいます。放っておくと、寝たきりや転倒、骨折などのリスクが増えます。
 予防対策としてはバランスの良い食事と運動です。まずは、3回の食事をしっかりと摂取し、栄養バランスの良い食事を心がけましょう。運動は早歩き、ジョギングなどのトレーニングを行いましょう。早めの予防に取り組み、サルコペニアを防ぎましょう。

2021年6月号

運動とメンタルヘルス

運動はさまざまな疾患に対する予防効果があるとされており、生活習慣病などの予防に運動療法が取り入れられ効果が認められています。最近では、運動による気分の改善が治療に応用できるのではないかとの考えから、特にうつ症状の人に積極的に運動療法が取り入られるようになり、症状の改善も認められています。また、うつ病などで休職された人は自宅安静による療養が中心であるため必然的に体力低下が起こり、症状が改善しても疲れやすく復職に支障をきたすということがあります。しかし運動療法ではこのような状況を改善させる効果が期待できると考えられています。
 運動は習慣づけることで、気分転換や、ストレス解消に繋がり、メンタルヘルスの不調を改善することができるとされています。普段あまり運動していない人は意識して行うようにしましょう。

2021年5月号

痛み

 「痛み」とは何でしょうか?日常で痛いと感じる場面はたくさんありますが、実は、なぜ痛いと感じるかは明確には解明されていません。
 臨床の現場では痛みは以下のように分類されます。
● 侵害受容性疼痛…外部刺激によって生じるもの、また組織に病変や異常があって生じるもの(打撲や骨折など)
● 神経障害性疼痛…神経系の異常によるもの(椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛など)
●心因性疼痛…原因がはっきりしないもの
 これらの痛みは混合することもあり治療が長期化することもあります。情動的、感覚的なものによって左右されることも多く、個人差がかなりあるため、痛みの期間や強さに応じた薬を処方します。
 痛みは悪いものとして捉えがちですが、体の異変の警告信号としての役割もあります。放置せずにかかりつけ医で相談するなど、健康を保つための手段として上手に付き合うことが大切です。

2021年4月号

肩こり

肩こりは、「後頭部から肩、肩甲部にかけての筋肉の緊張を中心とする不快感、違和感、鈍痛などの症状」と定義されており、性別に関係なく多くの人が悩まされています。原因はさまざまですが、姿勢の悪さが関係している場合が多く、最近ではパソコンやスマートフォンなどの長時間の使用が一因になっているといわれています。
 スマートフォン使用時の姿勢を観察してみると、頸部が前方に傾くため、頭部を支えるために頸部の周りの筋肉が過緊張して硬くなります。また比較的小さな文字を判読するため、眼精疲労を引き起こしさらに頸部の負担が増加するといった悪循環が起こります。思い当たる人は日ごろから姿勢を意識し、適度な運動やこまめなストレッチを取り入れるなど、長時間同じ姿勢をとらないようにしましょう。
 また、心臓疾患や肝臓、肺の疾患などでも肩こりとよく似た症状が出る場合がありますので、気になる人は自己判断せず医療機関を受診しましょう。

2021年3月号

免疫

最近は新型コロナウイルスの影響で免疫という言葉をよく耳にします。この免疫に大きく関与しているのがリンパ球のB細胞とT細胞と呼ばれるものです。抗原(ウイルスや細菌など)が体内に侵入すると、B細胞は抗体と呼ばれるものを生産し、この抗体と抗原がくっついて抗原の感染力を弱めたり、他の細胞と協力して抗原自体を破壊してくれます。一方、T細胞は感染してしまった細胞を見つけ出して破壊し、体内での感染拡大を防いでくれます。
 特定の感染症(麻しんなど)に一度かかると同じ感染症にかかりにくいというのもよく聞かれると思いますが、このメカニズムを獲得免疫といいます。これは、一度侵入した抗原の情報を記憶した細胞が長期間体内に存在し、再び侵入されたときに一早く対処できるよう学習しているからです。この仕組みを利用したものがワクチンです。新型コロナウイルスもワクチンなどで獲得免疫になることが期待されます。

2021年2月号

末梢動脈疾患

あまり聞き慣れない病名だと思いますが、比較的多く見られる疾患です。主に下肢の動脈の狭きょう窄さくや閉塞性病変により、冷感や歩行障害、潰瘍、壊死などの症状を伴う疾患群です。動脈硬化が原因となっている場合が多く、下肢だけでなく全身に進行した動脈硬化病変を合併する場合があり、経過中に脳血管障害や心筋梗塞などの冠動脈疾患を発症することが多いとされています。
 危険因子は男性に多く、年齢や喫煙の有無、糖尿病、肥満、高血圧などにも左右されますが、中でも喫煙者と糖尿病の人は特に危険が高いとされています。
 診断は比較的簡単で、足関節上腕血圧比(足首周辺の血圧の数値を上腕の血圧の数値で割ったもの)で診断されます。正常値は1.1 〜1.3程度で0.9以下だとこの疾患の可能性が高いです。なんとなく脚の冷感や歩行時の痛みがある人は足首の血圧も測って診断してみてください。数値が気になる人は、正確な測定をするためにも、医療機関を受診しましょう。

2021年1月号

関節痛

関節痛はさまざまな疾患が原因で起こります。代表的なものは変形性関節症といわれる関節の疾患で、疼とう痛つうにより歩行や階段の昇降が困難になります。症状が進むと、安静にしていても痛みがあり、関節が腫れたり可動域が制限されたりします。
 関節リウマチに代表される膠こう原げん病びょうも関節痛が起こる頻度が高い疾患で、滑膜炎という関節内の炎症が疼痛の原因の一つであると考えられています。また、痛風や糖尿病のような代謝性疾患、インフルエンザのようなウイルス性・細菌性の疾患でもよく起こります。
 このように色々な疾患によって関節痛は起こりますので、加齢によるものと自己判断せず、持続している人はもちろんのこと、特に突然の関節痛は早めに医療機関を受診してください。なお、寒
くなると関節痛が強くなる人もいますが、寒さとは関係がないとされています。温めると悪化する場合もありますので、気を付けるようにしてください。