医学豆知識(2013年)

2013年8月号

アンチエイジング

最近この言葉を耳にすることも多いと思いますが、日本語で言えば「抗老化」ということです。人は必ず年を取ります。年を取るにつれて老化が進んでいき、病気になったり寿命が来たりするなど人生の時計の針は徐々に進んでいきます。抗老化の考えは「時計の針を止める」ことではなく「針を少し戻して、その進みを遅らせる」ことです。
 最近は医学会でもアンチエイジングが取り上げられ、「抗加齢医学会」という学会も行われています。
抗加齢医学とは、医学的に加齢というプロセスに介入し、動脈硬化やがんのような加齢関連疾患の発症
確率を下げ、健康長寿をめざす医学とされています。要するに、病気にかからないような健康体をつくっ
て予防する、病気の発症を早期に発見する、その結果寿命が延びる、ということです。日本の女性・男
性の平均寿命は世界でも一二を争う長寿になっています。これはアンチエイジングの効果です。皆さんも、
アンチエイジングの精神で日々を過ごしましょう。

2013年7月号

夏期の体調管理

 夏の暑い時期に気を付けなければならないのは、日射病や熱射病です。直射日光で脳が熱くなってしんどくなるのが日射病、帽子や傘などで日光を遮断していても体が熱くなり、熱がこもってしんどくなるのが熱射病です。汗をかきにくい人は、体温が38 ~39度まで上がってしまい、生死をさまよう場合がありますので注意が必要です。

これらの予防には、水分補給と体温調節が効果的です。適宜水分を取ることで汗をかきやすくなり、体を冷やすことができます。また、最近は節電の風潮からクーラーの電源を入れない高齢者が多くなっていますが、室温調整も大切です。コンクリートやアスファルトの地面は熱を放出することができず、夜になっても気温が下がらないことがあります。室温が高すぎると寝ている時でも熱射病にかかってしまうことがありますので、気温が高い日はクーラーを使用してください。もし体調が優れなくなったら、すぐに専門医に相談してください。

2013年6月号

甲状腺の病気

甲状腺は首の前面にあって、新陳代謝にかかわる 「甲状腺ホルモン」を分泌しています。このホルモンは、多すぎても少なすぎても体調が悪くなります。甲状腺ホルモンが増え過ぎてしまう病気には「バセドウ病」があり、逆に減り過ぎてしまう病気には「橋本病」があります。

 疲れやだるさが続く、息切れがする、気力がないなど、はっきりしない症状が続くときは甲状腺ホルモンの異常も考えられます。

 また、甲状腺には良性・悪性の腫瘍ができることがあります。首(のど仏の下部)が腫れたり、しこりができた場合には検査が必要となります。甲状腺の腫れに痛みを伴い熱が出るといった症状のときは、「亜急性甲状腺炎」が疑われます。これらは簡単な検査で分かります ので、気になる症状がある人は、かかりつけの内科もしくは耳鼻咽喉科を受診してください。

2013年5月号

感染性胃腸炎

 感染性胃腸炎とは、細菌やウイルスに感染すること で発症する胃腸炎の総称です。1年を通して発生しま すが、冬はノロウイルスやロタウイルスといったウイ ルス性のものが流行します。感染すると、1〜2日の 潜伏期間の後、腹痛や下痢、嘔吐、発熱などの症状が 見られ、特に乳幼児や高齢者、疾患のある人は脱水症 状を起こすなど、重症化しやすいため注意が必要です。

 感染経路には、ウイルスが手や食品などを介して口 に入ったときに感染する経口感染と、感染者の便や吐 物が乾燥して空中に舞い、ちりと一緒に吸い込むこと で感染する飛沫感染があります。いずれも注意すれば 予防できるので、対策※をして感染を防ぎましょう。 

※ウイルスに感染しないための対策

◦手洗いを徹底する/◦マスクを着用する/◦食品 はきちんと加熱する/◦調理器具などは使用後きれ いに洗う/◦感染者とタオルなどの共用は避ける/ ◦感染者の便や吐物を処理するときは、拭き取った紙 類・おむつも一緒にビニール袋などで密閉して捨てる

2013年4月号

耳閉感

 耳が詰まった感じがする耳閉感は、頻度の多い症状です。飛行機に乗ったときやトンネルに入ったときに耳の詰まり感を感じることはよくありますが、詰まり感がいつまでも取れないという経験はありませんか?
 これは、気圧の変化で鼓膜の内と外に圧力差が生じ、鼓膜が内側に引っ張られることによって起こる症状です。
 鼻と耳をつなぐ耳管が正常に機能すれば、唾を飲み込むことで元に戻りますが、耳管が狭くなっている人は鼓膜の内側(中耳腔)との換気ができにくいため元に戻りにくく、放っておくと中耳腔に滲出液がたまり難聴になることもあるため、耳管に空気を通して換気を図る通気治療を行います。耳管の機能は鼻の炎症でも悪くなりますので、風邪などにも注意することが大切です。
 耳閉感は、単なる耳垢や突発性難聴でも起こる場合がありますので、早めの受診をお勧めします。

2013年3月号

うつ病と正常な落ち込みとの違い

人は嫌なことがあると、よく「うっとうしい」とつぶやきます。このような“落ち込み”は「気分が沈む」「つまらない」「やる気が出ない」といった、日ごろ誰でも経験する短い時間での“抑うつ”状態です。 大きな失敗をしたり、大切なものを失ったり、愛する人との別れなどで気持ちが落ち込んだり、ふさぎ込んでしまうことは、人生において誰しも経験することです。しかし、落ち込んだ気持ちになったからといって、仕事が手に付かなくなったり日常生活に支障をきたすわけではなく、さらに、抑うつ気分がほとんど終日、あらゆる場面で何週間も続くこともそうざらにはありません。うつ病と正常な“落ち込み”は、アルコール依存症と単なる酒好きの比較に似ており、社会適応に支障をきたすような状態になれば、それは病気の可能性があります。もし、そのような状態であれば医療機関への受診をお勧めします。

2013年2月号

ドライアイ

空気が乾燥すると、肌が乾燥するのと同じように目も乾きやすくなります。このように目が乾燥する病気を「ドライアイ」といいます。最近テレビや雑誌などでよく取り上げられているので、皆さんも聞いたことがあると思います。

ドライアイの主な症状は、目の中がゴロゴロしたり、しみるような感じがします。しかし、人によって角膜や結膜の状態が異なるので、一言にドライアイといってもいろいろな症状があります。そのため、一つの薬ですべてのドライアイが治るというわけではなく、それぞれの症状に合わせた治療法が必要となり、数種類の薬を使用して治療を行うことが大切です。

ドライアイの症状を感じたら、自己判断せず専門家に相談し、適切な治療を受けましょう。

2013年1月号

花粉症の季節

年が明け、しばらくすると花粉症の季節がやってきますね。アレルギーのない人には過ごしやすく良い季節かもしれませんが、花粉症の人にとっては嫌な季節でもあります。

今年の飛散予報は例年の2倍だそうで、注意が必要です。一方、花粉の量もさることながら、かゆみの度合いに影響するのが気温です。花粉が多く飛散しても、昨年のように寒冬であればそれほどかゆみもひどくはなりません。しかし、今年の冬は暖かくなるとのこと。花粉症の人にとってはより一層の対策が必要となりそうです。

予防は、抗アレルギー薬の投与が効果的です。内服・点眼・点鼻は飛散する1カ月前から投与してください。また、できるだけ肌を露出しないことも重要です。眼鏡や帽子、長袖の服を着用したり、外から帰ってきたときは体に付着した花粉を払うなど、細かいことに気を配りながら、花粉症の季節を乗り切りましょう。