医学豆知識(2011年)

2011年12月号

加齢性黄斑(おうはん)変性症

最近テレビなどで「加齢性黄斑変性症」という病気をよく耳にします。これは、年齢に伴って眼球の底にある網膜の黄斑という場所が変化する病気です。

黄斑は、視力に大きく影響を及ぼす場所で、この部位に何らかの障害が起こると、視力が瞬またたく間に落ちていくため、非常に大事な場所とされています。

この病気は、網膜の裏の栄養血管が障害されることで新しい血管(新生血管)が出現し、その血管によって網膜が障害される病気です。進行すれば新生血管が破裂し、出血することもあります。原因は、加齢ということ以外はっきりした解明はされていません。

症状として、視力が低下するのはもちろんですが、初期には偏視(ゆがみ)や物が小さく見えたりします。患者の多くは「片目で見ると線がゆがむ」「片方だけ見えにくい」などといった症状で受診されます。50歳を過ぎたら時々見え方のチェックをしてみてください。

治療は状態や時期によりさまざまな方法がありますが、有効な治療は難しく、今後の医学発展を待つしかないのが事実です。だから大事なのは初期段階での発見です。見え方がおかしいと思ったらまずは専門医へお尋ねください。

2011年11月号

めまい

春から夏、夏から秋への季節の変わり目にめまいを起こされる人が多いようです。

めまいには大きく分けて、?@頭や首に原因があるもの、?A耳に原因があるもの、?Bそのどちらにも属さない心因性、更年期障がい、ストレスによるものがあります。

?@には脳梗こう塞そくや脳出血、頸けい椎ついなど首の異常、脳の血流不全などがあります。?Aには耳じ 石せき器の機能異常といわれている良性発作性頭位めまい症やメニエール病、突発性難聴にめまいを伴うもの、前庭神経炎などがあります。

めまいの原因はさまざまです。意識障がいや手足の麻痺がある場合は、早急に脳神経外科などに、また耳の症状があるときや頭の位置を変えるとめまいがする場合は耳鼻咽喉科を受診されることをお勧めします。

2011年10月号

秋は健康が大事

猛烈な暑さも一段落し、秋の深まりを見せる今日のごろ、暑い夏を乗り切るとつい気が緩みがちになますが、これからいろいろと体に変化をきたすこと多い季節になってきます。

血圧の変動は意外と夏は安定していますが、秋、には変動することが多いので注意しましょう。

糖尿病の人は、やはり秋には食欲が出てきますで、血糖コントロールの悪化に要注意です。

また、気温の変化が大きくなるため、風邪を引くとも多くなり、日々の体調管理も必要です。

さらに、秋の花粉症は症状が強いので、アレルギ体質がある人は専門医に受診して、予防をしっかりることが大事です。

また、スポーツの秋ですので運動も盛んにすると思いますが、子どものけがにも今一度注意してください。

健康は秋が大事ですので、しっかり管理してがんばりましょう。

2011年9月号

コンタクトレンズは正しく使ってください

コンタクトレンズの装用者は年々増え、今では10人に1人がコンタクトレンズを装用しているといわれています。また最近では、カラーコンタクトレンズも登場し、若者の間ではブームにもなっています。

そこで問題になるのがコンタクトレンズによる感染症です。その背景にはコンタクトレンズ量販店の安売り販売、そしてインターネット販売の普及などがあります。正しい使い方をすれば感染症は予防できますが、使い方を教わらずに購入できるのも事実です。「コンタクトって消毒するの?」「入れたまま寝るよ」など以前では考えられないようなことが日常的に起きています。

自分の目は自分で守るしかありません。コンタクトレンズは眼科知識を備えた眼科専門医による処方が大切です。また、販売営業管理者による適切な販売が必要です。コンタクトレンズを使用している人は、いま一度使い方を確認してください。また、周りで使っている人がいれば声を掛けてあげてください。詳しくは専門医までお尋ねください。

2011年8月号

プール後の目洗いは必要?

今年もプールの季節がやってきました。最近「プール後の目洗いが無くなったけど大丈夫なの?」とよく聞かれます。以前は、目は洗うことが大切であるといわれていた時代もありましたが、最近では逆に良くないといわれています。

人はもともと目を守る機能が備わっています。涙や角膜表面の細胞などがそれにあたります。目を洗うことによってその必要な涙を流し落とすことになり、また水道水などで洗うと角膜表面の細胞も傷つけてしまうこともあります。その結果、ばい菌などに感染しやすくなり、結膜炎や角膜炎を誘発してしまうのです。このようなことから最近は、目洗いをしないようになりました。

一方、目を洗う市販薬をよく見かけます。これは水道水と違って角膜表面の細胞を傷つける心配はありません。しかし、必要な涙を流し落とすことには変わりありません。あまりやり過ぎると目に良くありませんので注意が必要です。詳しくは専門医までお尋ねください。

2011年7月号

麻疹とワクチンについて

麻疹は、高熱と発疹を伴う感染力の強い感染症で、重大な後遺症を起こすことがあります。

ワクチンの普及により発生数は減りましたが、先進国の中で日本は発生の多い国です。以前は麻疹の発症が珍しくなかったため、幼児期に1回予防接種を受けていれば、時々麻疹ウイルスと接触することで免疫力が強化され、長年にわたって麻疹に対する抗体が維持されました。

しかし近年、麻疹の発生が減ったために幼児期のワクチンの効果が弱くなり続け、成人の間で流行するようになりました。そのため現在、1回しか予防接種を受けていない小・中学生、高校生に追加接種する対策がとられています。

すでに麻疹にかかっていれば追加接種は必要ありませんが、接種回数が不明な場合は、成人でも検査の上、ワクチン接種が勧められます。また、抗体のある人がワクチン接種を受けても、免疫力が強化されるので問題はありません。

2011年6月号

6月にも花粉症があるの?

皆さんが知っている花粉は、2月からのスギ花粉、3月からのヒノキ花粉が有名ですね。でも植物の花粉はこの時期以外にも年中飛んでいると思ってください。

5月の初旬から飛び出すのがイネ科の花粉です。川や池、田んぼ、公園の周りにいっぱい咲いている草がイネ科の草で、カモガヤという草の名前は聞いたことがあるかも知れませんね。雨上がりに公園や草むらに行くと目がかゆくなったり、鼻がムズムズしたりする人はイネ花粉症かも知れません。八尾はまだまだ自然や田畑が多いので注意してください。

夏が終わりになると今度は秋の草の花粉が飛びます。キク科の草でブタクサが有名です。

このようにさまざまな花粉が年中飛んでいます。こんな時期に「目がかゆい」、「鼻水が出る」といった症状が出る人は、花粉症の可能性があることも考えてください。詳しくは専門医までご相談ください。

2011年5月号

日本脳炎

日本脳炎は、ウイルスを保有するブタやウマの血を吸った蚊が人を刺して感染するため、夏から秋に流行し、日本脳炎ウイルスに感染しているブタが多く存在する西日本に発生しやすい傾向があります。1990年以降発生は少ないのですが、最近の調査で野生のイノシシ、タヌキ、キツネ、アライグマの多くにウイルスがいることが分かっています。生駒山の調査では、これらの動物の70%にウイルスが検出されたと報告されています。遠足などで山に入る機会が多くなる前に、接種を済ませておきましょう。以前の日本脳炎ワクチンで想定以上の副作用が見られたため、積極的な接種が見合わされていましたが、新しい製法でワクチンが製造されるようになり、副作用もほかの予防接種と差は無くなっています。公費で接種を受けられる年齢が限られているため、確認の上、接種を受けてください。

2011年4月号

逆流性食道炎

食道と胃の境目(食道-胃接合部)には自然に収縮する構造を有しています。これは筋肉の痙けい攣れんや疾病によって下部食道が閉塞するのを防止するための構造です。胃の出口(幽門部)では筋肉が発達し、食べ物が胃から十二指腸への送り出しをスムーズにしている点と異なります。

胃液が過剰に分泌され、食道?胃接合部の閉じる力(一過性に下部食道括約筋弛緩)が低下すると、胃液が食道側に逆流し、胸焼けや咳、時には胸痛の自覚症状を伴います。

食道が慢性的に胃液(胃酸)にさらされると炎症を起こし、重症では食道潰かい瘍ようも呈します。診断は胃カメラ検査が普及し、軽症では内服治療で胃酸分泌を軽減させるPPI(プロトンポンプ阻害薬)が効果を発します。詳しくはかかりつけ医にご相談ください。

2011年3月号

眼鏡はいつから掛けたらいいの?

新学期を迎える季節となり、「そろそろ眼鏡を掛けた方がいいですか?」と聞く保護者の方が増えてきました。眼鏡には大きく分けて2種類あります。遠視や乱視のため、視力が出にくいお子さんが小さい時から掛けている眼鏡は治療用眼鏡で、一日中掛ける必要があります。もう一つは、一般的な近視の眼鏡で、小学校高学年や中学校から掛ける眼鏡です。これは本人が見にくくなったら掛けたらいいのですが、子どもはなかなか「見にくくなった」とは言いません。

日ごろから子どもの様子を観察して、子どもが不自由さを感じていないかを判断することが大事です。テレビを見るときにだんだん前で見るようになったり、壁に掛かっている時計を見るとき、目を細めることが多くなると、本人は「見にくくない」と言っても、そろそろ眼鏡が必要な時期となっています。早く掛けないといけないとまでは言えませんが、本人のためにも、眼鏡をいつから掛けるかよく話し合ってくださいね。

2011年2月号

インフルエンザの治療

インフルエンザの治療薬として内服薬のタミフルが有名ですが、ほかにも粉末を吸引する吸入薬に加え、平成22年からは点滴の治療薬も使えるようになり、内服が困難な人にも選択肢が増えました。

しかし、インフルエンザウイルスを駆逐できる薬品は今のところありません。現在の治療薬はどれも増殖を防ぐ作用であるため、発症初期に使用しないと効果がありません。症状が軽減してもウイルスを完全に抑え込むために用法を守って使用することが必要です。

まだ新しい薬であるため、使える年齢や副作用の問題など医療機関でよく説明を聞いて処方を受けてください。また、解熱剤の連用は避けてください。市販の総合感冒薬の多くには解熱剤の成分が含まれているため過信せず、インフルエンザの疑いがあるときは医療機関で検査を受け、適切な処方を受けてください。

2011年1月号

インフルエンザの診断

インフルエンザに感染すると、多くの場合は突然の高熱を発症し、寒気や筋肉痛、関節痛を伴うこともあります。咳や鼻水は初期には見られないこともあります。

インフルエンザの感染が疑われた場合、医療機関では迅速検査をして診断します。現在主流となっているのは、鼻の粘膜を綿棒でこすり、粘液に含まれている抗原を検出する検査です。発熱して半日経てば多くの場合は判定できますが、発症から時間が経っていないと検出できないこともあります。また、鼻の粘膜から検査をすると検出率は高いのですが、のどの粘膜や鼻水での検査では検出率はやや落ちます。

現在のインフルエンザの治療薬は増殖を抑制するものなので、発症初期でないと効果が

ありません。発熱してすぐに救急を受診しても判定ができませんが、1・2日以内には医療機関を受診し、診断を受けてください。