医学豆知識(2015年)

2015年12月号

冷え対策

 冬本番を前に、冷え対策は万全でしょうか。冷えは「ちょっとした不調」と思われがちですが、がんや脳血管障害、心疾患など、多くの病気の根源ではないかと注目されています。
 「手足が冷たい」「肩が凝る」「しもやけができやすい」など、冷えの感じ方は人によってさまざまで、原因もいろいろです。気温の低下など外的な影響のほか、精神的なストレスで冷えを感じる人もいます。本来、人は精神的なストレスがかかると交感神経が活発になり、戦闘モードになって体温が上がってきます。しかし、1カ月・半年と長くこのような状態が続くと、エネルギーがなくなり体温が下がってきます。このような場合は、ストレスを解消することが冷え対策となります。
 冷えを感じたら、「手なら手を」「足なら足を」といったように部分的に温めることが効果的です。また、冷えると内臓の働きが低下して免疫力が下がるため、体調を崩しやすい人は全身を温めましょう。冷えの自覚症状や生活環境は人によって違うため、毎日の生活の中から自分に合った対策を見つけることが大切です。

2015年11月号

薄毛

 最近、薄毛の悩みは男性だけでなく、女性にも増えてきています。女性の薄毛の増加は、男性型脱毛症によるものが多く、それはストレスが原因といわれています。ストレスを感じると、副腎皮質ホルモンの分泌により男性ホルモンが活性化し、頭頂部の毛が薄くなります。
 薄毛の対策として、タンパク質を含む魚や肉、ヨーグルトのほか、亜鉛、マグネシウム、ビタミンB群を多く含むナッツ類などを積極的に摂取することが効果的です。また、夜10時から深夜2時の時間帯は髪が育つゴールデンタイムのため、それまでに就寝するようにしましょう。なお、たばこは血行を悪くするので控えましょう。
 特に夏は、紫外線や汗で、髪や頭皮が傷みやすくなります。帽子をかぶるか日傘を差しましょう。また、シャンプーは刺激の少ないアミノ酸系がおすすめです。
 頭皮環境を整え、いつまでも健康な髪を保つため、健康的な生活をし、ストレスを少なく過ごすことを心がけましょう。

2015年10月号

乳がんの最新医療に待った!

 近年の日本人女性がかかるがんで、最も多いのが乳がんです。自己検診で早期発見しやすいがんではありますが、ほかの臓器などに転移してから見つかる例も少なくありません。
 乳がんの治療において、基本的には外科的切除が最も効果的であるといわれていますが、どれだけ乳房を切除するかが問題となります。そこで出てきたのが「ラジオ波治療」です。肝臓がんでは広く普及している療法で、がん組織に直接電極の針を刺し、電流を流すことで腫しゅ瘍ようを焼くため外傷が残りません。女性にとって乳房は非常に大切な部位ですので、切除が望ましい場合でもラジオ波治療で何とかしてあげたいという医師の思いもあったのか、一時は普及したのですが、焼き残しによる再発が予想以上に多く、現在は乳がん学会がストップをかけています。
 ラジオ波治療は、小さながんであれば十分な効果が認められているので、今後研究が進み、条件が整えば、再開されるのではないでしょうか。

2015年9月号

 痔は、大きく「痔核(いぼ痔)」「裂肛(きれ痔)」「痔瘻ろう(あな痔)」の3つに分けられます。痔核は、肛門を閉じるための皮膚が肛門の外に滑り出たもので、痔の中で最も多いといわれています。裂肛は、肛門上皮が傷ついて裂けた状態をいい、便秘がちな人に多く見られます。痔瘻は、肛門の内側と外側にトンネルのような穴ができ、腫れたり膿が出たりします。
 痔は、診察が恥ずかしいという理由で受診をためらいがちです。基本的には良性疾患ですが、大腸がんが併発していたり、実は直腸のポリープであったということもあります。出血や痛みなどの症状が続けば、必ず専門医を受診してください。
 また、痔は生活習慣にも要因があるといわれています。「便意を我慢する」「いきみ過ぎる」「トイレに長居する」などの習慣は肛門に負担をかけます。便意があればすぐにトイレに行き、5分以内に済ませるようにしましょう。トイレの温水洗浄もやり過ぎは良くありません。思い当たる場合は見直すようにしましょう。

2015年8月号

糖尿病性網膜症

 糖尿病とは、血液中の糖分が多くなる病気で、自覚症状がありません。しかし、長年放置していると血管がもろくなり、血管の閉へい塞そくや出血などでさまざまな臓器に障害が現れます。このような症状を糖尿病による合併症といい、代表的な合併症として腎不全、神経障害、糖尿病性網膜症の3つが挙げられます。
 特に、糖尿病性網膜症は目に症状が出るもので、最も注意が必要です。一度病状が進行すると治りにくく、場合によっては治療を行っても重篤化してしまう人もいます。日本では、年間約2万人が失明するといわれていますが、うち約3千人が糖尿病性網膜症によるものと考えられており、中途失明の原因第1位となっています。糖尿病性網膜症の治療で最も大切なことは、治療時期を間違わないようにすることです。
「血糖のコントロールができているから眼科に行かない」など、勝手に判断してはいけません。定期的に眼科を受診することが、病気の最大の予防になります。

2015年7月号

脂肪肝

 脂肪肝とは、肝臓にたまった脂肪により肝臓が炎症を起こし、長引けば肝硬変や肝がんにまで移行する恐れのある怖い病気です。
 日本人の約2千万人が脂肪肝と推測されており、その原因は飲酒によるものと考えられていましたが、近年、お酒を飲まないのに脂肪肝になる、いわゆる「非アルコール性脂肪肝」の人が多くみられ、そのうち約1割の人が肝臓に炎症を起こしていました。「お酒を飲まないから」と安心はできません。
 肝臓は、症状が現れにくい臓器で、非アルコール性脂肪肝の人は内臓脂肪型肥満、高血圧、糖尿病、メタボリックシンドロームを併発している場合が多いことが分かっています。定期検診の受診などで脂肪肝の疑いが指摘された場合は、精密検査を受けましょう。
 生活習慣病の代表的疾患の1つである脂肪肝の治療の第1歩は、生活習慣の改善です。バランスの良い食事や適度な運動を心がけ、健康的な生活習慣を身に付けることが大切です。

2015年6月号

圧迫骨折

 体の部位で最も骨折しやすいのは脊せき髄ずい(背骨)で、その多くは骨がもろくなってつぶれる圧迫骨折です。
 原因は、骨の密度が低下して骨がもろくなる骨こつ粗そ 鬆しょう症しょうによるもので、その患者数は男性300万人・女性980万人に上りますが、このうち治療を受けているのは
350万人ほどで、3割に満たないのが現状です。骨粗鬆症は、悪化すると寝たきりや要介護の原因にもなります。早めの診断・治療により、発症の予防や進行を防ぐことが重要です。
 骨の密度の低下といえば、カルシウム不足が思い浮かびますが、カルシウムと同時にビタミンDを摂取することにより、効果的にカルシウムを吸収できます。ビタミンDは、紫外線を浴びることにより体内で作られますが、それだけでは不十分なため、食べ物からも摂取する必要があります。しなやかで折れにくい骨を作るために、カルシウムやビタミンDと共にビタミンB6・B12、葉酸などの栄養素も補っていくことが大切です。

2015年5月号

食道がん

 食道はのどと胃をつなぐ、長さ約25㎝、太さ2・3㎝、壁の厚さ約4㎜の管状の臓器です。周辺にはリンパ節や血管が多く集まるため、食道がんは転移が早いことで知られており、年間約2万人が食道がんで亡くなっています。
 症状には「物が飲み込みにくい」「飲み物を飲むとむせる」「のどがしみる感じがする」「胸の上部に異物感がある」「声がかすれる」などがありますが、症状が出るころにはがんが進行しているケースがほとんどなので、初期段階で発見するには検診しか方法はありません。ほかのがんと同じく、初期であれば体に負担の少ない治療が受けられ、初期の食道がんの場合、開胸・開腹手術をせずに内視鏡で治療ができ、3・4日程度で退院することができます。
 食道がん患者は男性に多く、また高齢になるほど増加傾向にあります。お酒やたばこにも起因しますので、該当する人は、症状がなくてもぜひ一度検診を受診してみてください。

2015年4月号

指の切断

 事故などで指を完全に切断してしまったとしても、再接着できる場合があります。その際に重要となってくるのが、切断指の保存状態です。泥や汚れが付いている場合、まず、水で皮膚表面を軽く洗って汚れを落とします。次に、水にぬらして硬く絞った清潔なガーゼやタオルで切断指をくるみ、ビニール袋に入れて密封します。最後に、別の入れ物に氷水を入れ、切断指の入ったビニール袋をその中に浸かるように入れて冷却します。切断指は、冷却することで長く保存することができますが、直接氷水の中に入れたり、ドライア
イスで冷やしたりすると、切断面の組織の壊え死し・浮ふ 腫しゅを助長するため、絶対に行ってはいけません。また、切断された指と左右の指との間に、乾いた清潔なガーゼやタオルを1枚ずつはめ込み、その上から大きなガーゼで包み、損傷部を心臓より高い位置に上げます。
 不完全切断の時は、損傷部をガーゼやタオルにそっとくるんで固定し、その上から氷を入れたビニール袋で冷却します。
 再接着手術の可否などについては、搬送先の医療機関で説明を受けてください。