医学豆知識

2024年5月

高齢者のめまい

めまいは多くの人が経験していると思います。受診すると「様子を見ましょう」といわれたり、ビタミン剤や降圧剤を処方されるのが一般的かと思いますが、重大な病気が隠れている場合があり、注意が必要です。特に注意したいのが脳梗塞によるめまいです。ある病院によると、めまいで入院した患者の12%が脳梗塞であったというデータがあります。めまいの原因が起立性低血圧と診断された人は、頸(けい)椎(つい)の中を走行する動脈に血行不全があることが多いようです。ぐるぐると回るようなめまいで血圧が普段より異常に高くなった人は精密検査をお勧めします。首こりや肩こりが強い人もフラフラ感に伴うめまいを起こす場合があります。首の周りの筋肉の緊張が強くなり、異常な情報が脳に送られ発症するのではないかと考えられています。めまいには、原因がわからないものも多くあります。年齢のせいだと考えずきちんと検査することをお勧めします。

2024年4月

高齢者の糖尿病

生活習慣病で重要な疾患の一つである糖尿病は加齢とともに増加傾向にあり、65歳以上になると約5人に1人が疑われるとされます。高齢者の糖尿病は認知機能障害や転倒・骨折・うつなどを約2倍引き起こしやすく、その中でもアルツハイマー型認知症は1.5倍、血管性認知症は約2倍発症しやすいようです。サルコペニア、心不全、悪性腫瘍など併存する病気も多くあります。75歳以上になると4個以上併存する割合が約50%になるといわれています。治療は食事療法、運動療法、薬物療法を中心に行います。食事療法では適正なエネルギー量と十分なタンパク質、ビタミン摂取が必要で低栄養を防ぎましょう。運動療法は有酸素運動に加えてスクワットなどの筋肉トレーニング、バランス運動も効果的です。薬物療法ではいろいろな薬物がありますが、低血糖に注意が必要です。医師と十分に相談しながら最適な治療を行ってください。

2024年3月

子どもの花粉症と関連疾患

近年子どものアレルギー疾患が増加しています。中でも成人と同様に花粉症に悩む子どもも多くみられるようになりました。原因として、スギ花粉飛散量の増加だけでなく、食生活を含めた生活環境の変化、主に衛生環境も含めたライフスタイルの変化が考えられます。年齢層で見るとスギ花粉症では5 ~9歳までの約30%、10 ~19歳においては約50 %が発症しています。また通年性のアレルギー性鼻炎でみると0~4歳で約5 %が発症しているといわれています。関連した疾患に「花粉-食物アレルギー症候群」があります。バラ科の果物(リンゴ、イチゴ、サクランボなど)、野菜、大豆製品を摂取すると15分以内にロや喉にイガイガ感やかゆみの症状があらわれます。子どもが果物を食べて、ロの中がかゆいなどの訴えがあれば花粉症の有無を確認しましよう。果物のみのアレルギーと勘違いしないことか重要です

2024年2月

夜間頻尿

夜間頻尿は尿路の症状の中の畜尿症状と呼ばれるものの一つで、加齢とともに増加傾向にあり、生活の質にも大きく関与してきます。定義上は「夜間に排尿のために1回以上起きなければならないという訴え」とされ、比較的尿量が多ければ疑いが強くなります。尿量が少ない人は睡眠障害を疑い、ご自分の睡眠状態を確認してみましょう。眠れなくてトイレに行く回数が多い場合は、睡眠の改善を図るため内科、心療内科などに相談しましょう。残尿感や排尿痛などがある場合は、男性では前立腺肥大症、女性では過活動膀胱が疑われ、泌尿器科専門医を受診しましょう。また夜間頻尿もあり、加えて昼間にも頻尿がある場合は多尿の可能性があり、原因を調べるためすぐに専門医受診が望ましいです。そのほか糖尿病、腎機能障害、高血圧、心不全でも夜問頻尿は起こります。長く症状のある人は今一度かかりつけの医師にご相談してみてください。

2024年1月

血液検査(肝機能検査)

お酒をよく飲む人は、健康診断時の血液検査で気になる項目があるのではないでしょうか?今回は肝機能検査に代表されるAST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTの3つの項目に関する豆知識です。ASTは肝臓だけでなく心臓や腎臓にも含まれており、心筋梗塞でも上昇します。肝臓では細胞内とミトコンドリアに多く含まれており、アルコールにより障害を受けると上昇します。ALTは肝臓の細胞質に多く含まれており、ALT値の上昇が見られたらまず肝臓の障害を疑ってみましょう。また、肝臓の障害はアルコールによるものとは限らないので、より精密な検査を受けましょう。γ-GTのうち、血清γ-GTは飲酒状態を反映して変動することが多く、禁酒すれば急速に低下します。2週間の禁酒で約2分の1になるといわれています。検査は定期的にきちんと受け、異常があれば原因を見つけることが最も重要です。